経営において、「黒字か赤字か」という利益の話は確かに重要です。
しかし、安定した経営を実現するうえで、利益以上に大切なのが資金繰りです。
いくら利益が出ていても、現金が足りなくなれば会社は止まります。
経営を続けるうえで最も怖いのは、「資金のショート」=お金が尽きることです。
■黒字倒産はなぜ起きるのか?
「黒字倒産」という言葉があります。
会計上は利益が出ているのに、現金が足りずに会社が倒産してしまうケースです。
たとえば、
- 売上は計上されているが、入金が3か月後
- 仕入れや人件費の支払いは先に発生している
- 投資や借入返済でキャッシュが流出している
このように、損益と資金の動きのタイミングがズレることで、黒字でも資金がショートすることがあります。
だからこそ、利益計算だけでなく、「資金の流れをリアルに把握すること」が経営の安定には欠かせません。
■資金繰り表は「会社の血流マップ」
資金繰りを把握する最も基本的な方法が、資金繰り表の作成です。
資金繰り表とは、「いつ・いくら入金があり、いつ・いくら出金するのか」を整理した表のこと。
これを月次で作成しておくことで、
- 資金の過不足を事前に予測できる
- 借入や返済のタイミングを戦略的に判断できる
- 設備投資・人件費増加のリスクを見極められる
まさに資金繰り表は、会社の血流マップです。
経営の健康状態を示す最重要資料といえます。
■「見える化」で真の損益分岐点がわかる
資金繰りを見える化すると、単なる損益分岐点(会計上の黒字ライン)ではなく、
資金繰りベースでの「真の損益分岐点」が見えてきます。
つまり、「会社として、キャッシュを減らすことなく経営が回っていく最低売上はいくらか?」が明確になるのです。
これを把握していれば、今後の投資判断・採用・価格設定など、あらゆる経営判断の精度が上がります。
■安定するまでは「毎月」作る
資金繰りは、経営が安定していれば四半期単位でも構いません。
しかし、まだ体力が十分でない会社や変動の激しい業種では、毎月の資金繰り表作成が欠かせません。
毎月のキャッシュフローを可視化し、
「今、何が原因でお金が減っているのか?」を明確にすることが、次の一手を導きます。
■チェックポイント
✅ 黒字・赤字だけでなく、資金繰りを重視しているか?
✅ 資金ショートのリスクを常に意識しているか?
✅ 資金繰り表を作成し、入出金のタイミングを把握しているか?
✅ 現金ベースでの損益分岐点を把握しているか?
✅ 毎月の資金繰りを「経営判断の材料」として活用しているか?
■資金繰りの見える化が経営を守る
利益は「結果」であり、資金繰りは「現実」です。
資金の流れを把握し、キャッシュを健全に保つことは、経営者の最も重要な責任です。
数字に強い会社は強い。
資金繰りを“感覚”ではなく“管理”できる会社こそ、真に安定した経営を実現します。
更なる熱量を。
税理士事務所WATT 代表税理士 井深悠人