はじめに
「会社案内のパンフレットはあります。」
「名刺には、会社名・肩書・連絡先を載せています。」
もちろん、それだけでも最低限の役割は果たしています。
しかし、せっかくお金をかけてパンフレットや名刺を作るのであれば、単なる「会社情報を載せた紙」で終わらせるのはもったいないことです。
名刺交換をした数日後、相手が名刺を見返したとき。
パンフレットを持ち帰り、社内で上司に説明するとき。
そこに、
「この会社は、誰の、どんな課題を解決してくれる会社なのか」
が一目で伝わるでしょうか。
パンフレットや名刺は、経営者や営業担当者がその場を離れた後も、自社のことを伝え続けてくれる営業ツールです。
だからこそ、デザインの美しさだけではなく、「何を伝えるか」を徹底的に考える必要があります。
■会社名だけでは「何をしてくれる会社か」は伝わらない
名刺交換の場では、相手と話をしているため、自社のことを説明できます。
しかし、問題はその後です。
一日に何十枚も名刺交換をする交流会などでは、数日後には、
「この人、何の会社だったかな?」
となってしまうこともあります。
例えば、名刺に、
株式会社○○
代表取締役 ○○○○
としか書かれていなければ、会社名を知らない人には事業内容が伝わりません。
そこで、
「製造業専門の採用支援会社」
「岐阜県の中小企業向けDX支援」
「飲食店の売上アップに特化したWeb制作」
など、短い言葉を添えてみます。
それだけで、
「誰に、何を提供している会社なのか」
が格段に伝わりやすくなります。
名刺は自己紹介カードではありません。
次の仕事につながる可能性を持った営業ツールです。
■「何でもできます」は、強みが伝わりにくい
パンフレットでよく見かけるのが、サービスをできるだけ多く並べる構成です。
「Aもできます。」
「Bもできます。」
「Cもできます。」
「Dもできます。」
確かに、自社の対応範囲を伝えることは大切です。
しかし、お客様が知りたいのは、サービスの一覧だけではありません。
「自分の悩みを、この会社が解決してくれるのか?」
ということです。
例えば、
「経営コンサルティング・財務支援・業務改善・IT導入支援」
と並べるだけではなく、
「売上は伸びているのに、なぜかお金が残らない。そんな成長企業の経営数字を一緒に整理します。」
と伝えた方が、該当する経営者には強く響きます。
伝える情報を増やすことと、伝わることは別です。
「何を載せるか」以上に、「何を一番伝えるか」を決めることが重要です。
■主語を「当社」から「お客様」へ変える
パンフレットを一度開いてみてください。
「当社は○○年創業です。」
「当社は高い技術力を有しています。」
「当社では○○にも対応しています。」
このように、「当社」が主語になっている文章ばかりになっていないでしょうか。
会社の強みを伝えることは必要です。
しかし、お客様が本当に関心を持っているのは、その強みによって自分にどんなメリットがあるのかです。
例えば、
「最新設備を導入しています。」
だけではなく、
「最新設備によって短納期にも対応し、お客様の生産計画の遅れを防ぎます。」
と伝える。
「経験豊富なスタッフが対応します。」
ではなく、
「専門スタッフが最初から最後まで担当するため、何度も同じ説明をしていただく必要がありません。」
と伝える。
自社の特徴を、お客様にとっての価値へ翻訳する。
これだけでメッセージの伝わり方は大きく変わります。
■具体例:名刺の一言で「その後の会話」が変わる
例えば、交流会で二人の経営者が名刺交換をしたとします。
Aさんの名刺には、
「株式会社A 代表取締役」
とだけ書いてあります。
Bさんの名刺には、
「従業員30名以下の製造業専門 採用と定着の仕組みづくりを支援」
と書いてあります。
もし名刺交換した相手が、
「うちも最近、人が採れなくて困っているんですよ。」
という悩みを持っていたらどうでしょうか。
Bさんには、その場で相談が始まる可能性があります。
さらに、本人に悩みがなくても、
「そういえば、知り合いの社長が採用に困っていたな。」
と紹介につながる可能性もあります。
良いメッセージは、相手に「自分との接点」を見つけてもらえます。
名刺に載せる短い一言にも、営業戦略が表れるのです。
■パンフレットは「説明資料」ではなく「次の行動を生む資料」
パンフレットを読んだ人に、最終的に何をしてほしいでしょうか。
電話をしてほしい。
ホームページを見てほしい。
無料相談に申し込んでほしい。
店舗へ来てほしい。
資料請求をしてほしい。
ここが曖昧だと、パンフレットを読んで、
「良い会社ですね。」
で終わってしまいます。
例えば最後に、
「まずは無料相談へ。」
「事例の詳細はこちら。」
「QRコードからサービス内容をご確認いただけます。」
など、次の行動を明確に示します。
マーケティングでは、こうした行動喚起をCTA(Call To Action)と呼びます。
難しい言葉を覚える必要はありません。
大切なのは、
「読んだ後、何をしてほしいのか?」
を明確にすることです。
■名刺からホームページまで、メッセージはつながっているか
名刺には、
「成長企業を徹底支援。」
と書いてある。
パンフレットには、
「創業支援が得意。」
と書いてある。
ホームページには、
「すべてのお客様に幅広く対応。」
と書いてある。
これでは、結局どんな会社なのか分からなくなります。
名刺。
パンフレット。
ホームページ。
SNS。
営業資料。
広告。
それぞれ単独で作るのではなく、すべて同じブランドの一部として考えることが重要です。
媒体が変わっても、
「誰のための会社なのか。」
「どんな価値を提供するのか。」
「何を大切にしているのか。」
という中心部分は一貫させましょう。
何度接触しても同じメッセージが伝わることで、少しずつ会社のイメージが相手の中に定着していきます。
■「経営者にしか言えない言葉」が入っているか
会社案内を外部の制作会社に依頼すること自体は問題ありません。
しかし、すべてを任せきりにしてしまうと、
「お客様に寄り添います。」
「高品質なサービスを提供します。」
「地域社会に貢献します。」
といった、どの会社でも使える言葉ばかりになることがあります。
そこに入れてほしいのが、経営者自身の言葉です。
なぜ、この会社を経営しているのか。
どんなお客様を幸せにしたいのか。
仕事で絶対に妥協したくないことは何か。
どんな会社をつくりたいのか。
この部分は、他社には真似できません。
きれいなコピーよりも、多少泥臭くても経営者本人の言葉の方が、人の心を動かすことがあります。
パンフレットや名刺は、情報を載せるだけではなく、会社の熱量を持ち運ぶツールでもあるのです。
■作った後は、実際の反応を聞く
パンフレットや名刺は、一度作ったら何年も同じものを使い続けるケースがあります。
しかし、会社は変化します。
強みも変わります。
ターゲットも変わります。
提供するサービスも変わります。
だからこそ、定期的に見直しましょう。
そして、できれば実際のお客様や初対面の方に、
「この名刺を見て、何の会社だと思いますか?」
「このパンフレットを見て、一番印象に残ったことは何ですか?」
と聞いてみてください。
自分たちが伝えたいことと、相手に伝わっていることが一致しているとは限りません。
メッセージは「伝えたか」ではなく、「伝わったか」で判断する。
これは、すべてのマーケティングに共通する考え方です。
■チェックポイント
- 名刺を見ただけで、何をしている会社か分かるか?
- 「誰の、どんな悩みを解決する会社か」が明確になっているか?
- サービスの説明だけでなく、お客様にとってのメリットを伝えているか?
- 自社ならではの強みや経営者の想いが入っているか?
- パンフレットを読んだ後の「次の行動」を示しているか?
- 名刺・パンフレット・ホームページ・SNSのメッセージに一貫性があるか?
- 実際のお客様や第三者に「どう伝わったか」を確認しているか?
- 会社の成長に合わせて定期的に内容を見直しているか?
■まとめ|名刺一枚にも、会社の戦略は表れる
パンフレットや名刺は、小さなツールです。
しかし、そこには、
誰をお客様にしたいのか。
何を強みとして戦うのか。
どんな価値を提供するのか。
どんな会社として覚えてほしいのか。
という、会社の戦略そのものが表れます。
情報を詰め込むことが目的ではありません。
格好良いデザインにすることだけが目的でもありません。
大切なのは、
「この会社は、自分のための会社かもしれない。」
と相手に感じてもらうことです。
そして、
「詳しく話を聞いてみたい。」
「ホームページを見てみよう。」
「この人をあの社長に紹介したい。」
という次の行動につなげることです。
ぜひ一度、自分の名刺を机の上に置いて、初めて見る人のつもりで眺めてみてください。
会社名と肩書を隠しても、「誰のために、何をしている会社なのか」が伝わるでしょうか。
もし伝わらないのであれば、まだ改善できます。
名刺一枚。
パンフレット一冊。
その小さな接点から、未来のお客様との関係が始まるかもしれません。
だからこそ、伝える言葉には徹底的にこだわりましょう。
更なる熱量を。
税理士事務所WATT 代表税理士 井深悠人
税務・会計・経営に関する無料相談を受け付けています。
「自社の強みを整理したい」「誰に何を伝えるべきか一緒に考えたい」「営業・マーケティングを経営戦略から見直したい」など、経営に関するお悩みもお気軽にご相談ください。