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2026.09.11

【第72回】自社の強みを伝えるストーリーはあるか?

はじめに

「御社の強みは何ですか?」

そう聞かれたとき、すぐに答えられるでしょうか。

「品質には自信があります。」

「丁寧な対応を心掛けています。」

「地域密着で頑張っています。」

もちろん、どれも立派な強みです。しかし、それだけでは競合他社との違いがお客様に伝わらないことがあります。

そこで重要になるのが、自社の強みを“ストーリー”として伝えることです。

なぜ、この会社を始めたのか。

どんなお客様の悩みを解決したいのか。

これまで、どんな壁を乗り越えてきたのか。

仕事をするうえで、何を絶対に譲らないのか。

商品やサービスのスペックだけでは伝わらない「会社の背景」にこそ、お客様が共感し、選びたくなる理由が隠れています。


■「良い商品」だけでは違いが伝わりにくい時代

多くの市場で、商品やサービスの品質は高くなっています。

ホームページを検索すれば、似たような商品、価格、サービスを簡単に比較できます。

そんな中で、

「高品質です。」

「親切・丁寧です。」

「お客様第一です。」

と伝えるだけでは、なかなか違いが伝わりません。

例えば、同じ10万円の商品を販売する2社があったとします。

A社は、

「高品質な商品を10万円で提供します。」

と説明しています。

B社は、

「以前、お客様から○○という相談をいただいたことをきっかけに、この商品を開発しました。従来の商品では解決できなかった△△を改善するため、3年間試行錯誤して現在の形になりました。」

と説明しています。

商品の性能が同じだったとしても、B社には「なぜ、この商品が存在するのか」という意味があります。

その意味がお客様の価値観と重なったとき、価格だけではない選択理由が生まれます。


■ストーリーとは「格好良い会社紹介」ではない

ストーリーというと、

「創業者の感動的な話が必要なのでは?」

と思うかもしれません。

そんなことはありません。

大切なのは、格好良く見せることではなく、自社が大切にしている価値観を具体的な出来事で伝えることです。

例えば、

「納期を絶対に守る。」

という会社であれば、

なぜ納期をそこまで大切にするようになったのか。

過去にどんな経験があったのか。

納期を守るために社内でどんな工夫をしているのか。

そこまで伝えることで、単なる「納期厳守」という言葉に厚みが生まれます。

ストーリーとは、会社を大きく見せるためのものではありません。

会社の考え方を、お客様に理解してもらうためのものなのです。


■まずは「なぜ?」を掘り下げる

自社のストーリーをつくるときは、経営者自身に「なぜ?」を繰り返してみましょう。

例えば、

「なぜ、この事業を始めたのか?」

「なぜ、この商品を扱っているのか?」

「なぜ、この地域で事業をしているのか?」

「なぜ、このお客様を大切にしているのか?」

「なぜ、この品質にこだわるのか?」

「なぜ、この仕事を続けているのか?」

最初は、

「需要があったから。」

「自分が得意だったから。」

という答えかもしれません。

しかし、さらに掘り下げていくと、

「この仕事を通じて、お客様の○○という悩みをなくしたかった。」

「前職で△△という経験をして、もっと良い方法があると思った。」

といった、自社ならではの背景が出てきます。

強みは、会社の歴史の中に埋まっていることが多いのです。


■具体例:同じ「スピード対応」でも伝わり方は変わる

例えば、自社の強みが「レスポンスの速さ」だったとします。

ホームページに、

「迅速に対応します。」

と書くだけでは、競合他社も同じことを書けます。

そこで、

「創業当初、お客様から『困ったときにすぐ相談できる会社がなくて困っていた』と言われたことがありました。それ以来、私たちはレスポンスの速さを単なるサービスではなく、お客様の不安を減らすための約束と考えています。」

と伝えたらどうでしょうか。

「レスポンスが速い」という機能的な強みが、

「お客様を不安にさせたくない」という会社の価値観に変わります。

これがストーリーの力です。


■「誰のための会社なのか」をストーリーに入れる

強いストーリーには、会社の話だけでなく、お客様の存在があります。

「私たちはこんなにすごい会社です。」

だけでは、一方的な自慢になってしまいます。

そうではなく、

「こんなお客様の力になりたい。」

「こんな悩みを解決したい。」

「お客様にこんな未来を実現してほしい。」

まで伝えることが重要です。

例えば、

「地域で頑張る中小企業を応援します。」

よりも、

「良い商品や技術を持っているのに、数字や資金繰りの不安によって挑戦を諦めてほしくない。だから私たちは、経営者と一緒に数字を見ながら、次の一手を考えます。」

と伝えた方が、どんな会社なのかが具体的に伝わります。

会社のストーリーの主人公は、経営者だけではありません。

その先には、必ずお客様がいるのです。


■ストーリーは営業にも採用にも効く

自社のストーリーが明確になると、マーケティングだけでなくさまざまな場面で活用できます。

ホームページ。

会社案内。

パンフレット。

名刺。

営業商談。

SNS。

採用ページ。

会社説明会。

例えば採用でも、

「年間休日○日、給与○万円。」

という条件だけでなく、

「私たちは、何を目指している会社なのか。」

「なぜ、その仕事をしているのか。」

「どんなお客様を幸せにしたいのか。」

を伝えることで、その価値観に共感する人材が集まりやすくなります。

ストーリーは、お客様だけでなく、社員や採用候補者に会社の価値観を伝える言葉にもなります。


■社員が同じストーリーを語れるか

経営者だけが自社の想いを語れても、会社全体には十分浸透していません。

営業担当者に、

「御社の強みは何ですか?」

と聞いたとき、

社長とはまったく違う答えが返ってくる。

社員によって説明がバラバラ。

そんな状態では、お客様に伝わるブランドもバラバラになってしまいます。

だからこそ、

「私たちは、なぜこの仕事をしているのか。」

「私たちは、お客様にどんな価値を提供したいのか。」

を社内でも共有することが重要です。

社員一人ひとりが自分の言葉で同じ方向性を語れるようになれば、そのストーリーは単なる広告コピーではなく、会社の文化になっていきます。


■数字や事実を入れると、さらに強くなる

ストーリーには想いが必要です。

しかし、想いだけでは説得力が弱くなることもあります。

そこで、具体的な数字や事実を組み合わせます。

例えば、

「長年培った技術力があります。」

ではなく、

「創業以来30年間、○○加工に特化し、年間1万点以上を製造してきました。」

「お客様に寄り添います。」

ではなく、

「毎月必ずお客様と面談し、経営数字と今後の課題を一緒に確認しています。」

といった形です。

想い+具体的な事実。

この二つが組み合わさることで、ストーリーは「良い話」から「信頼できる強み」へ変わります。


■チェックポイント

  • 自社を創業した理由を、自分の言葉で説明できるか?
  • 自社が「誰の、どんな悩みを解決したい会社なのか」を明確にしているか?
  • 強みについて「なぜ、その強みが生まれたのか」まで説明できるか?
  • 実際のエピソードや具体的な数字を交えて伝えているか?
  • ホームページや営業資料に自社のストーリーが反映されているか?
  • 社員も自社の強みや大切にしている価値観を説明できるか?
  • お客様が「この会社だから頼みたい」と思える理由を伝えられているか?

■まとめ|商品ではなく「この会社から買いたい」と言われる会社へ

商品やサービスは、いつか競合に真似されるかもしれません。

価格も真似できます。

機能も真似できます。

広告の表現も真似できます。

しかし、

会社が歩んできた歴史、経営者の経験、お客様との関係、仕事に対する価値観まで完全に真似することはできません。

そこに、自社だけのブランドがあります。

「何を売っている会社なのか。」

だけではなく、

「なぜ、それを売っているのか。」

「誰のために、この仕事をしているのか。」

「どんな未来をつくりたいのか。」

そこまで伝えてみてください。

強い会社には、強い商品があります。

しかし、それだけではありません。

「この会社だからお願いしたい」と思ってもらえる理由があります。

自社の強みを箇条書きにするだけで終わらせず、その強みが生まれた背景まで言葉にする。

そこから、自社にしか語れないストーリーが始まります。


更なる熱量を。
税理士事務所WATT 代表税理士 井深悠人

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