WATT Tax & Accounting Firm

SCROLL

2026.09.09

【第71回】広告の効果測定はできているか?

はじめに

「広告を出しているけれど、本当に効果があるのか分からない。」

このような状態になっていないでしょうか。

ホームページへの広告、SNS広告、折込チラシ、地域情報誌、看板、ダイレクトメール――。中小企業にもさまざまな広告手段があります。

しかし、広告は「出すこと」が目的ではありません。

広告に使ったお金が、問い合わせ・商談・契約、そして最終的に利益へどれだけつながったのか。

ここまで確認して初めて、広告を経営判断に活かすことができます。

広告費を単なる「経費」で終わらせず、会社を成長させる「投資」に変えるためには、効果測定が欠かせません。


■「問い合わせが増えた」だけで判断しない

例えば、30万円の広告を出して20件の問い合わせがあったとします。

一見すると、成果が出ているように見えます。

しかし、本当に見るべきなのはその先です。

20件の問い合わせから、

商談になったのは何件か。

見積を提出したのは何件か。

契約したのは何件か。

そして、いくらの売上・粗利益が生まれたのか。

仮に20件問い合わせがあっても契約が1件だけなら、広告の内容と実際の商品・サービスにズレがあるかもしれません。

反対に、問い合わせが5件しかなくても、そのうち4件が優良顧客になったのであれば、非常に価値の高い広告といえます。

「反応の数」ではなく、「会社にもたらした成果」まで見ることが重要です。


■最低限、この数字は把握したい

広告の効果測定というと難しく感じるかもしれませんが、まずは基本的な数字から確認しましょう。

例えば、

広告費:30万円
問い合わせ:20件
商談:10件
契約:5件

であれば、

問い合わせ1件を獲得するための広告費は1万5,000円。

契約1件を獲得するための広告費は6万円です。

さらに、1件の契約から平均30万円の粗利益が見込めるのであれば、

広告費30万円に対して、5件×30万円=150万円の粗利益につながったと考えることができます。

ここまで分かれば、

「広告費30万円は高いか、安いか。」

を感覚ではなく数字で判断できます。


■広告ごとに「入口」を分ける

複数の広告を出している会社では、

「どの広告から問い合わせが来たのか分からない」

という問題がよく起こります。

例えば同じ月に、

Web広告 10万円
地域情報誌 10万円
ダイレクトメール 10万円

を実施して、問い合わせが15件あったとします。

どの広告から何件来たのか分からなければ、翌月どこへ予算を配分すべきか判断できません。

そこで、

Web広告は専用ページへ誘導する。

チラシには専用QRコードを掲載する。

問い合わせフォームに「当社を何で知りましたか?」という項目を設ける。

電話問い合わせでは流入経路を確認する。

など、広告ごとに成果を追える仕組みをつくります。

完璧でなくても構いません。

まずは「何を見て問い合わせてくれたのか」を記録することから始めましょう。


■具体例:安い広告が「良い広告」とは限らない

例えば、A広告とB広告を比較してみます。

A広告は10万円を使って20件の問い合わせ、4件の契約。

B広告は20万円を使って10件の問い合わせ、5件の契約だったとします。

問い合わせ1件あたりの費用だけを見ると、A広告の方が優秀です。

しかし契約1件あたりでは、

A広告:2万5,000円
B広告:4万円

となります。

さらに、A広告から契約した顧客の平均粗利益が5万円、B広告からの顧客が平均粗利益30万円だったらどうでしょうか。

評価は大きく変わります。

広告を評価するときは、

「いくらで反応を取れたか」だけでなく、「どんなお客様を獲得できたか」

まで見る必要があります。


■売上ではなく「利益」で考える

広告の効果測定で特に注意したいのが、売上だけで判断することです。

例えば広告費100万円から500万円の売上が生まれたとしても、粗利益率が10%なら粗利益は50万円です。

広告費だけで100万円かかっているため、それだけを見れば採算は合っていません。

一方、広告費100万円から300万円の売上しか生まれていなくても、粗利益率が70%なら粗利益は210万円です。

経営者が見るべきなのは、

「広告費に対して、どれだけ利益を生み出したか」

という視点です。

売上を増やすことが目的ではありません。

最終的に会社へ利益とキャッシュを残すことが目的なのです。


■一度の取引だけで判断しない

さらに、中長期的な視点も重要です。

例えば広告費5万円で獲得したお客様が、初回は3万円の利益しか生まなかったとします。

これだけを見ると赤字です。

しかし、そのお客様が5年間取引を続け、合計100万円の利益をもたらしてくれるのであればどうでしょうか。

広告費5万円は、非常に効率の良い投資になります。

そこで意識したいのが、LTV(顧客生涯価値)です。

継続取引が多いビジネスでは、

「最初の契約でいくら儲かったか。」

だけではなく、

「一人のお客様が長期的にどれだけ利益をもたらしてくれるか。」

という視点で広告費を考えることが重要です。


■効果が見えない広告を「何となく」続けない

中小企業では、

「昔から出しているから。」

「付き合いがあるから。」

「競合もやっているから。」

という理由で広告を継続しているケースがあります。

もちろん、認知向上やブランド形成など、短期的な契約件数だけでは測れない広告もあります。

しかし、それでも、

「この広告の目的は何なのか?」

「何をもって継続・中止を判断するのか?」

は決めておくべきです。

効果が分からないまま年間100万円を使い続ければ、5年間で500万円です。

中小企業にとって決して小さな金額ではありません。

広告予算にも、経営者として明確な意思を持つことが必要です。


■毎月「広告別の成績表」をつくる

広告の効果測定を習慣化するために、おすすめなのが簡単な成績表をつくることです。

例えば、

広告媒体
広告費
問い合わせ件数
商談件数
契約件数
契約金額
粗利益
顧客獲得単価

を毎月記録します。

そして、

「伸ばす広告」

「改善する広告」

「やめる広告」

を判断します。

広告予算を前年と同じように配分するのではなく、成果の出ている場所へ経営資源を集中させる。

これだけでも、同じ広告予算から生み出せる成果は変わってきます。


■チェックポイント

  • 広告媒体ごとの費用を把握しているか?
  • どの広告から問い合わせが来たか記録しているか?
  • 問い合わせ数だけでなく、商談数・契約数まで追っているか?
  • 契約1件あたりの顧客獲得コストを把握しているか?
  • 売上だけでなく、粗利益まで確認しているか?
  • 継続取引がある場合はLTVも意識しているか?
  • 数字をもとに広告予算の継続・改善・中止を判断しているか?

■まとめ|広告費を「なんとなく使うお金」から「投資」へ

広告は、出せば必ず成果が出るものではありません。

だからこそ、

出す。

測る。

比較する。

改善する。

この繰り返しが必要です。

「この広告から何件問い合わせがあったのか。」

「何件契約したのか。」

「いくらの利益が生まれたのか。」

ここまで数字で説明できるようになれば、広告に対する経営判断は大きく変わります。

成果が出る広告には、さらに投資する。

改善余地がある広告は、内容を変えて試す。

成果が出ない広告は、勇気を持ってやめる。

限られた広告予算を、最も成果を生み出す場所へ集中させること。

それこそが、中小企業に必要な広告戦略です。

まずは今月支払っている広告宣伝費をすべて書き出し、

「この広告から、いくらの利益が生まれているか?」

一つずつ確認するところから始めてみてください。

数字が見えれば、次に打つべき手も見えてきます。


更なる熱量を。
税理士事務所WATT 代表税理士 井深悠人

税務・会計・経営に関する無料相談を受け付けています。

「広告宣伝費を使っているものの成果が見えない」「集客・営業の数字と利益をつなげて考えたい」「限られた経営資源をどこへ投資すべきか整理したい」など、経営に関するお悩みもお気軽にご相談ください。

無料相談はこちら

関連記事

関連タグ