はじめに
「広告を出しているけれど、本当に効果があるのか分からない。」
このような状態になっていないでしょうか。
ホームページへの広告、SNS広告、折込チラシ、地域情報誌、看板、ダイレクトメール――。中小企業にもさまざまな広告手段があります。
しかし、広告は「出すこと」が目的ではありません。
広告に使ったお金が、問い合わせ・商談・契約、そして最終的に利益へどれだけつながったのか。
ここまで確認して初めて、広告を経営判断に活かすことができます。
広告費を単なる「経費」で終わらせず、会社を成長させる「投資」に変えるためには、効果測定が欠かせません。
■「問い合わせが増えた」だけで判断しない
例えば、30万円の広告を出して20件の問い合わせがあったとします。
一見すると、成果が出ているように見えます。
しかし、本当に見るべきなのはその先です。
20件の問い合わせから、
商談になったのは何件か。
見積を提出したのは何件か。
契約したのは何件か。
そして、いくらの売上・粗利益が生まれたのか。
仮に20件問い合わせがあっても契約が1件だけなら、広告の内容と実際の商品・サービスにズレがあるかもしれません。
反対に、問い合わせが5件しかなくても、そのうち4件が優良顧客になったのであれば、非常に価値の高い広告といえます。
「反応の数」ではなく、「会社にもたらした成果」まで見ることが重要です。
■最低限、この数字は把握したい
広告の効果測定というと難しく感じるかもしれませんが、まずは基本的な数字から確認しましょう。
例えば、
広告費:30万円
問い合わせ:20件
商談:10件
契約:5件
であれば、
問い合わせ1件を獲得するための広告費は1万5,000円。
契約1件を獲得するための広告費は6万円です。
さらに、1件の契約から平均30万円の粗利益が見込めるのであれば、
広告費30万円に対して、5件×30万円=150万円の粗利益につながったと考えることができます。
ここまで分かれば、
「広告費30万円は高いか、安いか。」
を感覚ではなく数字で判断できます。
■広告ごとに「入口」を分ける
複数の広告を出している会社では、
「どの広告から問い合わせが来たのか分からない」
という問題がよく起こります。
例えば同じ月に、
Web広告 10万円
地域情報誌 10万円
ダイレクトメール 10万円
を実施して、問い合わせが15件あったとします。
どの広告から何件来たのか分からなければ、翌月どこへ予算を配分すべきか判断できません。
そこで、
Web広告は専用ページへ誘導する。
チラシには専用QRコードを掲載する。
問い合わせフォームに「当社を何で知りましたか?」という項目を設ける。
電話問い合わせでは流入経路を確認する。
など、広告ごとに成果を追える仕組みをつくります。
完璧でなくても構いません。
まずは「何を見て問い合わせてくれたのか」を記録することから始めましょう。
■具体例:安い広告が「良い広告」とは限らない
例えば、A広告とB広告を比較してみます。
A広告は10万円を使って20件の問い合わせ、4件の契約。
B広告は20万円を使って10件の問い合わせ、5件の契約だったとします。
問い合わせ1件あたりの費用だけを見ると、A広告の方が優秀です。
しかし契約1件あたりでは、
A広告:2万5,000円
B広告:4万円
となります。
さらに、A広告から契約した顧客の平均粗利益が5万円、B広告からの顧客が平均粗利益30万円だったらどうでしょうか。
評価は大きく変わります。
広告を評価するときは、
「いくらで反応を取れたか」だけでなく、「どんなお客様を獲得できたか」
まで見る必要があります。
■売上ではなく「利益」で考える
広告の効果測定で特に注意したいのが、売上だけで判断することです。
例えば広告費100万円から500万円の売上が生まれたとしても、粗利益率が10%なら粗利益は50万円です。
広告費だけで100万円かかっているため、それだけを見れば採算は合っていません。
一方、広告費100万円から300万円の売上しか生まれていなくても、粗利益率が70%なら粗利益は210万円です。
経営者が見るべきなのは、
「広告費に対して、どれだけ利益を生み出したか」
という視点です。
売上を増やすことが目的ではありません。
最終的に会社へ利益とキャッシュを残すことが目的なのです。
■一度の取引だけで判断しない
さらに、中長期的な視点も重要です。
例えば広告費5万円で獲得したお客様が、初回は3万円の利益しか生まなかったとします。
これだけを見ると赤字です。
しかし、そのお客様が5年間取引を続け、合計100万円の利益をもたらしてくれるのであればどうでしょうか。
広告費5万円は、非常に効率の良い投資になります。
そこで意識したいのが、LTV(顧客生涯価値)です。
継続取引が多いビジネスでは、
「最初の契約でいくら儲かったか。」
だけではなく、
「一人のお客様が長期的にどれだけ利益をもたらしてくれるか。」
という視点で広告費を考えることが重要です。
■効果が見えない広告を「何となく」続けない
中小企業では、
「昔から出しているから。」
「付き合いがあるから。」
「競合もやっているから。」
という理由で広告を継続しているケースがあります。
もちろん、認知向上やブランド形成など、短期的な契約件数だけでは測れない広告もあります。
しかし、それでも、
「この広告の目的は何なのか?」
「何をもって継続・中止を判断するのか?」
は決めておくべきです。
効果が分からないまま年間100万円を使い続ければ、5年間で500万円です。
中小企業にとって決して小さな金額ではありません。
広告予算にも、経営者として明確な意思を持つことが必要です。
■毎月「広告別の成績表」をつくる
広告の効果測定を習慣化するために、おすすめなのが簡単な成績表をつくることです。
例えば、
広告媒体
広告費
問い合わせ件数
商談件数
契約件数
契約金額
粗利益
顧客獲得単価
を毎月記録します。
そして、
「伸ばす広告」
「改善する広告」
「やめる広告」
を判断します。
広告予算を前年と同じように配分するのではなく、成果の出ている場所へ経営資源を集中させる。
これだけでも、同じ広告予算から生み出せる成果は変わってきます。
■チェックポイント
- 広告媒体ごとの費用を把握しているか?
- どの広告から問い合わせが来たか記録しているか?
- 問い合わせ数だけでなく、商談数・契約数まで追っているか?
- 契約1件あたりの顧客獲得コストを把握しているか?
- 売上だけでなく、粗利益まで確認しているか?
- 継続取引がある場合はLTVも意識しているか?
- 数字をもとに広告予算の継続・改善・中止を判断しているか?
■まとめ|広告費を「なんとなく使うお金」から「投資」へ
広告は、出せば必ず成果が出るものではありません。
だからこそ、
出す。
測る。
比較する。
改善する。
この繰り返しが必要です。
「この広告から何件問い合わせがあったのか。」
「何件契約したのか。」
「いくらの利益が生まれたのか。」
ここまで数字で説明できるようになれば、広告に対する経営判断は大きく変わります。
成果が出る広告には、さらに投資する。
改善余地がある広告は、内容を変えて試す。
成果が出ない広告は、勇気を持ってやめる。
限られた広告予算を、最も成果を生み出す場所へ集中させること。
それこそが、中小企業に必要な広告戦略です。
まずは今月支払っている広告宣伝費をすべて書き出し、
「この広告から、いくらの利益が生まれているか?」
一つずつ確認するところから始めてみてください。
数字が見えれば、次に打つべき手も見えてきます。
更なる熱量を。
税理士事務所WATT 代表税理士 井深悠人
税務・会計・経営に関する無料相談を受け付けています。
「広告宣伝費を使っているものの成果が見えない」「集客・営業の数字と利益をつなげて考えたい」「限られた経営資源をどこへ投資すべきか整理したい」など、経営に関するお悩みもお気軽にご相談ください。