はじめに
「SNSはやった方がいいと思うけれど、何を発信すればいいか分からない。」
「投稿はしているけれど、売上につながっている実感がない。」
「忙しくなると更新が止まってしまう。」
中小企業の経営者から、こうした声を聞くことがあります。
Instagram、X、Facebook、YouTube、TikTokなど、SNSは今や企業にとって身近な情報発信手段になりました。
しかし、アカウントを開設して投稿を続けるだけでは、必ずしも成果にはつながりません。
重要なのは、フォロワーを増やすことそのものではなく、「誰に、何を伝え、最終的にどんな行動につなげたいのか」を明確にすることです。
SNSを単なる広報活動で終わらせず、会社の認知、信頼、採用、そして売上につながる経営資産へ育てていきましょう。
■まず「何のためにSNSをやるのか」を決める
SNS活用で最初に決めたいのは、投稿内容ではありません。
目的です。
例えば、
- 自社を知ってもらいたい
- 商品・サービスへの問い合わせを増やしたい
- 店舗への来店を増やしたい
- 採用応募を増やしたい
- 既存顧客との関係を深めたい
- 経営者や社員の人柄を伝えたい
など、会社によって目的は異なります。
ここが曖昧なまま、
「とりあえず毎日投稿しよう。」
と始めてしまうと、次第に投稿すること自体が目的になってしまいます。
例えば採用が目的なら、商品の宣伝ばかりでは十分ではありません。
社員の働く姿や社内の雰囲気、仕事への想い、入社後の成長イメージなどを発信した方が、求職者には伝わりやすいでしょう。
目的が変われば、発信すべき内容も変わる。
まずはここを明確にすることがスタートです。
■すべてのSNSをやる必要はない
「InstagramもXもFacebookもYouTubeもやった方がいいですか?」
答えは、必ずしもそうではありません。
中小企業の人員や時間は限られています。
大切なのは、たくさんのSNSに手を広げることではなく、自社のお客様がいる場所へ集中することです。
例えば、写真や動画で商品の魅力を伝えやすい業種と、専門的な情報発信から信頼を積み上げる業種では、相性の良い媒体や発信方法が違います。
さらに、BtoCなのかBtoBなのか、顧客の年齢層はどこなのか、採用目的なのか営業目的なのかによっても変わります。
流行しているSNSだから始めるのではなく、
「自社が届けたい相手は、どこにいるのか?」
から考えましょう。
■「売り込み」ばかりになっていないか
企業SNSでありがちなのが、
「新商品発売!」
「キャンペーン実施中!」
「お問い合わせはこちら!」
という投稿ばかりになってしまうことです。
もちろん、商品やサービスの案内も必要です。
しかし、毎回広告のような投稿ばかりでは、フォローし続けたいとは思ってもらいにくいでしょう。
例えば製造業であれば、
製品が完成するまでの工程。
職人の技術。
品質管理へのこだわり。
よくあるお客様の悩み。
社員の仕事風景。
飲食店なら、
食材へのこだわり。
仕込みの様子。
商品の楽しみ方。
スタッフの紹介。
商品の開発秘話。
なども立派なコンテンツです。
「自社が言いたいこと」だけではなく、「お客様が知りたいこと」を発信する。
この視点が非常に重要です。
■SNSは「会社の人柄」を伝えられる
ホームページやパンフレットでは、どうしても情報が整ったものになりやすくなります。
一方、SNSでは日々の仕事や社員の様子、経営者の考え方などを継続的に伝えることができます。
これは中小企業にとって大きな強みです。
例えば初めて問い合わせをするお客様は、
「どんな会社なんだろう?」
「どんな人が対応してくれるんだろう?」
という不安を持っています。
そのとき、SNSで社員の顔や仕事への考え方を知っていれば、問い合わせへの心理的なハードルが下がることがあります。
特に、商品そのものだけでは差別化しにくい業種ほど、
「誰から買うか」「誰にお願いするか」
が選ばれる理由になります。
SNSは、その「人」を伝えることができる媒体なのです。
■具体例:投稿から問い合わせまでの導線をつくる
例えば、ある会社がInstagramで専門知識を発信しているとします。
投稿を見た人が、
「この会社、詳しそうだな。」
と思った。
プロフィールを見る。
ホームページへ移動する。
サービス内容を確認する。
問い合わせをする。
ここまでつながって初めて、SNSが営業活動の一部になります。
ところが、
プロフィールに何の会社なのか書かれていない。
ホームページへのリンクが分かりにくい。
ホームページへ移動しても問い合わせ先が見つからない。
これでは、せっかく興味を持ってもらっても機会を逃してしまいます。
SNS単体で考えるのではなく、
SNS → プロフィール → ホームページ → 問い合わせ
という一連の導線を確認しましょう。
■フォロワー数だけを追いかけない
SNSを始めると、どうしても気になるのがフォロワー数です。
もちろん、多くの人に情報が届くことには価値があります。
しかし、
フォロワー1万人、問い合わせ0件。
フォロワー1,000人、毎月10件問い合わせ。
会社にとってどちらが価値があるでしょうか。
目的が売上や問い合わせなら、見るべき数字はフォロワー数だけではありません。
例えば、
- 投稿の閲覧数
- 保存数
- プロフィール閲覧数
- ホームページへの流入数
- 問い合わせ件数
- 来店件数
- 採用応募数
- 契約件数
などです。
SNSでも、最終的な経営成果まで数字をつなげることが重要です。
■「何を見て問い合わせたか」を確認する
SNSの効果を測るために、ぜひ実践してほしいことがあります。
それは、新規のお客様に、
「当社を何で知りましたか?」
と聞くことです。
問い合わせフォームに選択欄を設けても構いません。
「Instagramを見ていました。」
「社長の投稿を以前から読んでいました。」
という回答が積み上がれば、SNSがどの程度顧客獲得に貢献しているのか分かります。
さらに、
「どんな投稿を見て問い合わせようと思いましたか?」
まで聞ければ、次の発信内容を考えるヒントにもなります。
SNSも感覚ではなく、数字と顧客の声の両方で改善していくことが大切です。
■継続するために「仕組み化」する
SNS活用で最も難しいことの一つが、継続です。
最初は毎日投稿していたのに、
本業が忙しくなる。
ネタがなくなる。
担当者が変わる。
そして更新が止まる。
よくあるパターンです。
そこで、投稿を個人のやる気に頼らない仕組みをつくります。
例えば、
毎週月曜日に翌週分のネタを決める。
投稿テーマを「商品」「お客様の悩み」「社員」「会社の想い」などに分類する。
写真を日常的にストックする。
月に一度、まとめて投稿案を作る。
担当者と確認者を決める。
といった方法です。
毎日投稿することよりも、無理なく半年、1年と続けられる体制をつくることの方が重要です。
■経営者の発信も大きな武器になる
中小企業では、経営者自身がSNSに登場することも有効です。
なぜこの事業をしているのか。
どんな会社をつくりたいのか。
仕事で何を大切にしているのか。
どんなお客様の力になりたいのか。
こうした内容は、会社公式の文章だけでは伝えにくいものです。
経営者自身の言葉で継続的に発信することで、お客様だけでなく、採用候補者や取引先にも会社の価値観が伝わります。
SNSは、広告媒体であると同時に、経営者と会社の信用を積み上げる場所でもあるのです。
■炎上・誤投稿への備えも忘れない
SNSには大きな可能性がある一方で、リスクもあります。
社員が会社の機密情報を投稿する。
お客様が写った写真を無断で掲載する。
感情的な投稿をしてしまう。
個人アカウントと会社アカウントを間違える。
こうしたトラブルが起こる可能性もあります。
そのため、
「何を投稿してよいのか。」
「誰が投稿するのか。」
「投稿前に誰が確認するのか。」
「問題が起きた場合に誰が対応するのか。」
といった最低限のルールは決めておきましょう。
攻めるためにも、守りの仕組みは必要です。
■チェックポイント
- SNSを活用する目的を明確にしているか?
- 自社のターゲットに合ったSNSを選んでいるか?
- 宣伝だけでなく、お客様に役立つ情報を発信しているか?
- 経営者や社員など「人」が見える発信をしているか?
- SNSからホームページ・問い合わせまでの導線を整えているか?
- フォロワー数だけでなく、問い合わせや契約への貢献を測っているか?
- 継続して発信できる仕組みをつくっているか?
- 投稿内容や情報管理について最低限のルールを決めているか?
■まとめ|SNSを「投稿する場所」から「信頼を積み上げる場所」へ
SNSは、投稿すればすぐに売上が増える魔法の道具ではありません。
しかし、
お客様に役立つ情報を届ける。
会社の考え方を伝える。
社員や経営者の人柄を知ってもらう。
そして、それを継続する。
この積み重ねによって、
「この会社、いつも良い情報を発信しているな。」
「何かあったら、この会社に相談してみよう。」
という信頼が少しずつ生まれていきます。
そして、その信頼が問い合わせや採用、紹介につながる瞬間があります。
大切なのは、バズることではありません。
自社が本当に届けたい相手へ、価値ある情報を届け続けること。
SNSを「何を投稿しよう?」から考えるのではなく、
「誰に、どんな価値を届け、その先でどんな関係を築きたいのか?」
から考えてみてください。
フォロワーという数字の向こう側にいるのは、一人ひとりのお客様です。
その一人に届く発信を積み重ねることが、やがて会社の大きな力になっていきます。
更なる熱量を。
税理士事務所WATT 代表税理士 井深悠人
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