はじめに
「借金は少ないほうがいい」
「できるだけ早く返したほうが安心だ」
こうした考え方は、必ずしも間違いではありません。
しかし、成長を目指す経営においては、それが最適解とは限らない場面が多くあります。
■成長期の事業に「融資」は不可欠
特に事業開始初期や成長フェーズでは、
自己資金だけで事業を拡大するのには限界があります。
- 人材採用
- 設備投資
- 広告・マーケティング
- 新規事業への投資
これらをタイミングよく実行するためには、
融資を活用して事業資金を先行投下することが不可欠です。
■融資の王道は「利息以上の利益を生むこと」
融資の本質はシンプルです。
借りたお金を事業に投下し、
支払利息以上の利益を生み出して回収する。
この前提が成り立つのであれば、
**融資はコストではなく、成長を加速させるための“レバレッジ”**になります。
事業投資と回収がうまく回る構造を作れていれば、
理論上は「お金は借りれば借りるほど、事業は大きくなる」のです。
■返済計画は「資金サイクル」から考える
重要なのは、
いくら借りるかよりも、
どのように返すかです。
- 投下した資金が、いつ・どのくらいで回収されるのか
- キャッシュフローにどの程度の余裕があるのか
- 成長投資を止めずに返済できるか
これらを踏まえ、
資金の投下と回収のサイクルに合った返済計画を立てる必要があります。
■繰り上げ返済・早期返済が「正解」とは限らない
「早く返せば利息が減る」
これは事実です。
しかし、
利息以上の利益を生み出せる投資先がある場合、
繰り上げ返済やスピーディな返済は、必ずしも最適解ではありません。
- 返済に回したお金を
- 事業に再投資できていれば
- より大きな利益を生み出せたかもしれない
というケースは少なくありません。
■「返済を遅らせる」という戦略的判断
もし、
- 支払利息よりも高い利回りで
- 安定的に利益を生み出せる
のであれば、
返済をあえて遅らせ、手元資金を厚く保つという判断が正解になる場合もあります。
これは無謀な借入ではなく、
事業と数字を理解したうえでの“戦略的判断”です。
■融資と返済は「経営戦略」そのもの
借入金の実行と返済計画は、
単なる資金繰りの話ではありません。
- どの事業に
- どのタイミングで
- どれだけ投資し
- どのスピードで回収するのか
これらを踏まえて、
経営者自身が戦略的に設計すべき領域です。
事業形態やビジネスモデルによって、
「最適な借り方・返し方」は大きく異なります。
■チェックポイント
✅ 融資を「成長投資」として捉えているか?
✅ 支払利息以上の利益を生み出す投資に使えているか?
✅ 資金の投下と回収のサイクルを把握しているか?
✅ 返済計画を戦略的に設計しているか?
✅ 早期返済が本当に最適か、検討できているか?
■借入金は「使い方」で武器にも毒にもなる
借入金そのものが良い・悪いのではありません。
問題は、どう使い、どう返すかです。
事業を伸ばすための融資は、
正しく設計すれば、経営を一段引き上げる強力な武器になります。
借入金の返済計画を、
「作業」ではなく「戦略」として考えられているか。
それが、成長企業と停滞企業を分ける分岐点です。
更なる熱量を。
税理士事務所WATT 代表税理士 井深悠人