経営における支出(経費)は、大きく「固定費」と「変動費」に分けられます。
この2つの構造を理解していなければ、売上が上がっても利益が増えない、あるいは赤字の原因が見えないという状況に陥りやすくなります。
会社を強くする第一歩は、お金の使い方を構造で把握することです。
■固定費と変動費の違いとは?
まず、基本的な考え方を整理しましょう。
- 変動費:売上に比例して増減する費用(例:仕入原価、外注費、販売手数料など)
- 固定費:売上に関係なく発生する費用(例:人件費、家賃、水道光熱費、通信費など)
変動費は「売れば売るほど増える経費」、
固定費は「売っても売らなくてもかかる経費」です。
この2つを混同していると、どれだけ売上を上げても、思ったほど利益が残らない構造になってしまいます。
■「固定費を粗利で回収する」発想を持つ
固定費は、どんなに売上が減っても発生します。
つまり、経営を維持するためには、まず固定費を粗利で回収できるかどうかがポイントになります。
固定費 ÷ 粗利率 = 損益分岐点売上高
この関係式を理解することで、
「どれだけ売上を上げれば黒字になるのか」
「現状の粗利率では固定費をまかなえるのか」
が明確になります。
■粗利率を把握して経営を効率化する
粗利率とは、売上から変動費を差し引いた粗利益の割合です。
粗利率が高ければ高いほど、同じ売上でも多くの利益を残すことができます。
たとえば:
- 粗利率が20% → 100万円の売上で20万円の粗利
- 粗利率が50% → 100万円の売上で50万円の粗利
粗利率を上げるには、
- 仕入価格を下げる
- 高付加価値商品を増やす
- 値下げを避ける
といった戦略的な取り組みが必要です。
■経費の特性を理解し、対策を変える
固定費と変動費は、その性質が違うため、打つべき対策も異なります。
- 固定費 → 「抑える」「効率化する」「投資対効果を測る」
- 変動費 → 「コントロールする」「粗利率を上げる」「変動要因を分析する」
たとえば、固定費の中でも「削ると競争力を失う費用」もあります。
単純にコストカットするのではなく、“経営の意図”をもって使うことが重要です。
■管理会計による「見える化」が必須
固定費・変動費の把握は、感覚ではなく見える化で行うべきです。
会計データをもとにした「管理会計の設計」を行うことで、
- 粗利率
- 固定費の回収率
- 損益分岐点
- 経費の構成比率
をいつでも確認できる状態をつくれます。
経営は“数字のスポーツ”。
数字をリアルタイムで把握できる仕組みが、強い経営をつくります。
■チェックポイント
✅ 固定費と変動費の区分を正確に把握できているか?
✅ 固定費を回収するための損益分岐点を理解しているか?
✅ 自社の粗利率を把握し、改善できる体制があるか?
✅ 固定費・変動費それぞれに対して適切な対策を打っているか?
✅ 管理会計により、数字を“見える化”できているか?
■「数字の構造」を理解する会社は強い
経営の数字をただ「結果」として見るのではなく、
構造として理解し、意思決定に使う会社が強くなります。
固定費と変動費を正しく把握し、
“利益の出る構造”を経営者自身が設計すること。
それが、強く・長く続く会社の条件です。
更なる熱量を。
税理士事務所WATT 代表税理士 井深悠人