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2025.11.19

【第19回】固定費と変動費を把握しているか?

経営における支出(経費)は、大きく「固定費」と「変動費」に分けられます。
この2つの構造を理解していなければ、売上が上がっても利益が増えない、あるいは赤字の原因が見えないという状況に陥りやすくなります。

会社を強くする第一歩は、お金の使い方を構造で把握することです。


■固定費と変動費の違いとは?

まず、基本的な考え方を整理しましょう。

  • 変動費:売上に比例して増減する費用(例:仕入原価、外注費、販売手数料など)
  • 固定費:売上に関係なく発生する費用(例:人件費、家賃、水道光熱費、通信費など)

変動費は「売れば売るほど増える経費」、
固定費は「売っても売らなくてもかかる経費」です。

この2つを混同していると、どれだけ売上を上げても、思ったほど利益が残らない構造になってしまいます。


■「固定費を粗利で回収する」発想を持つ

固定費は、どんなに売上が減っても発生します。
つまり、経営を維持するためには、まず固定費を粗利で回収できるかどうかがポイントになります。

固定費 ÷ 粗利率 = 損益分岐点売上高

この関係式を理解することで、
「どれだけ売上を上げれば黒字になるのか」
「現状の粗利率では固定費をまかなえるのか」
が明確になります。


■粗利率を把握して経営を効率化する

粗利率とは、売上から変動費を差し引いた粗利益の割合です。
粗利率が高ければ高いほど、同じ売上でも多くの利益を残すことができます。

たとえば:

  • 粗利率が20% → 100万円の売上で20万円の粗利
  • 粗利率が50% → 100万円の売上で50万円の粗利

粗利率を上げるには、

  • 仕入価格を下げる
  • 高付加価値商品を増やす
  • 値下げを避ける
    といった戦略的な取り組みが必要です。

■経費の特性を理解し、対策を変える

固定費と変動費は、その性質が違うため、打つべき対策も異なります。

  • 固定費 → 「抑える」「効率化する」「投資対効果を測る」
  • 変動費 → 「コントロールする」「粗利率を上げる」「変動要因を分析する」

たとえば、固定費の中でも「削ると競争力を失う費用」もあります。
単純にコストカットするのではなく、“経営の意図”をもって使うことが重要です。


■管理会計による「見える化」が必須

固定費・変動費の把握は、感覚ではなく見える化で行うべきです。
会計データをもとにした「管理会計の設計」を行うことで、

  • 粗利率
  • 固定費の回収率
  • 損益分岐点
  • 経費の構成比率
    をいつでも確認できる状態をつくれます。

経営は“数字のスポーツ”。
数字をリアルタイムで把握できる仕組みが、強い経営をつくります。


■チェックポイント

✅ 固定費と変動費の区分を正確に把握できているか?
✅ 固定費を回収するための損益分岐点を理解しているか?
✅ 自社の粗利率を把握し、改善できる体制があるか?
✅ 固定費・変動費それぞれに対して適切な対策を打っているか?
✅ 管理会計により、数字を“見える化”できているか?


■「数字の構造」を理解する会社は強い

経営の数字をただ「結果」として見るのではなく、
構造として理解し、意思決定に使う会社が強くなります。

固定費と変動費を正しく把握し、
“利益の出る構造”を経営者自身が設計すること。
それが、強く・長く続く会社の条件です。


更なる熱量を。
税理士事務所WATT 代表税理士 井深悠人


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