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2025.11.26

【第20回】粗利率を商品別・部門別に把握できているか?

はじめに

前回の第19回では、経費を「固定費」と「変動費」に分けることの重要性をお伝えしました。
その先にあるのが、「粗利率」を商品別・部門別に把握することです。

売上がどれだけあっても、粗利率が低ければ会社にはお金が残りません。
売上を追うだけの経営から、利益構造を理解して意思決定する経営へ。
ここが会社を強くする分岐点です。


粗利率とは「稼ぐ力の本質」

粗利率(=売上総利益率)とは、
売上高に対してどれだけの粗利益(売上-変動費)が残るかを示す割合です。

式で表すと、

粗利率 = 粗利益 ÷ 売上高 × 100

たとえば、同じ売上100万円でも、

  • 粗利率20% → 粗利益20万円
  • 粗利率50% → 粗利益50万円

この差が、経営の安定性を決定づけます。


「売上が多い=良い」ではない

多くの中小企業で見られるのが、「売上規模の拡大=成長」という誤解です。
しかし、売上を増やしても、粗利率が下がれば利益は残りません。

むしろ、粗利率の低い商品や部門ばかりを伸ばすと、
“頑張っているのに儲からない”という悪循環に陥ります。

だからこそ、「どの商品・どの部門が利益を生んでいるのか」を把握することが不可欠です。


商品別・部門別で見る「真の稼ぎ頭」

粗利率は商品やサービス、さらには部門ごとに大きく異なります。

  • 商品A:売上1,000万円、粗利率50% → 粗利500万円
  • 商品B:売上2,000万円、粗利率20% → 粗利400万円

売上だけを見ればBの方が大きいですが、利益を生んでいるのはAです。
この構造を理解せずに「Bをもっと売ろう」と判断すれば、
会社全体の利益率はむしろ悪化してしまいます。

粗利率を“全体ではなく、分解して見る”ことが、経営判断の精度を劇的に高めます。


値決め・値上げの判断基準にも

粗利率は、価格戦略の基礎データでもあります。
値上げや値下げを検討する際に、**「どの程度までなら利益を確保できるか」**を把握していなければ、致命的な誤判断を招きます。

特に、原材料費・仕入価格が上昇している昨今では、
「販売価格を据え置いたまま、粗利率が低下している」というケースが多発しています。

経営者は、感覚ではなく数字で判断する必要があります。
粗利率の低下は、静かに会社の体力を奪うサイレントリスクです。


粗利率を“見える化”する管理会計の仕組みを

商品別・部門別の粗利率を把握するためには、
日々の会計データを整理し、管理会計の仕組みを構築することが不可欠です。

  • 商品・部門別の売上と原価を分けて記録
  • 月次・四半期で粗利率を可視化
  • 目標粗利率に対しての達成率を分析

この“数字の見える化”ができている会社ほど、
適切な投資判断・価格戦略・リソース配分ができています。


チェックポイント

✅ 粗利率を商品別・部門別に把握できているか?
✅ 売上だけでなく、粗利益(利益構造)で意思決定できているか?
✅ 原価高騰に対して、粗利率を維持・改善する対策を取っているか?
✅ 値決め・値上げ・販路判断の基準に粗利率を活用しているか?
✅ 管理会計で粗利率を見える化し、定期的に分析しているか?


経営者が粗利率を理解すれば、会社は強くなる

粗利率を商品別・部門別に把握することは、
「どこに経営資源を集中すべきか」を決める羅針盤です。

売上ではなく、利益を生む構造で戦う会社こそが、これからの時代を生き残ります。
経営者が粗利率を理解し、意思決定に使う——その瞬間から、会社は確実に強くなります。


更なる熱量を。
税理士事務所WATT 代表税理士 井深悠人


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