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2026.08.14

【第64回】ターゲット市場を定義しているか?

はじめに

「もっと売上を伸ばしたい。」

そう考えたとき、多くの会社がまず取り組むのが、営業件数を増やすことや広告を出すことではないでしょうか。

しかし、その前に確認しておきたいことがあります。

「そもそも、自社はどの市場で戦うのか?」ということです。

どれだけ良い商品・サービスを持っていても、それを必要としている人が少ない市場や、競合が圧倒的に強い市場で戦えば、成果を出すことは難しくなります。

一方、自社の強みが活きる市場を見つけることができれば、小さな会社でも十分に勝つことができます。

「誰に売るか」だけでなく、「どこで戦うか」を決めること。

これがターゲット市場を定義するということです。


■「誰でもお客様」は、戦略ではない

「どのようなお客様を対象にしていますか?」と聞かれて、
「特に絞っていません。どんなお客様でも大歓迎です。」と答える会社は少なくありません。

もちろん、実際に問い合わせがあれば幅広く対応すること自体は問題ありません。

しかし、マーケティングまで「誰でも歓迎」で進めてしまうと、商品も広告も営業もぼやけてしまいます。

例えば、「法人向けのサービス」と一口に言っても、

  • 創業したばかりの会社
  • 年商数千万円の会社
  • 年商数億円の成長企業
  • 地域密着型の老舗企業
  • 全国展開を目指す企業

では、抱えている課題も予算も求めるサービスもまったく違います。

すべての人に選ばれようとすると、誰からも「自分のための会社だ」と思ってもらえなくなる。

これは、マーケティングで非常に注意したいポイントです。


■市場は「地域×業種×規模×課題」で細かく考える

ターゲット市場を考える際には、漠然と「中小企業」「一般消費者」と括るのではなく、もう一段深く考えてみましょう。

例えば、「岐阜県の中小企業」から、「岐阜市周辺の建設業」

さらに、「岐阜市周辺で年商1億円を超え、社員数が増え始めている建設会社」まで絞れば、かなり具体的になります。

さらに、「売上は伸びているが、資金繰りや利益管理に課題を感じている」

という悩みまで加えれば、提供すべきサービスも伝えるべきメッセージも見えてきます。

市場を細分化することは、お客様を減らすことではありません。

自社が最も価値を発揮できる場所を見つける作業なのです。


■「市場の魅力」と「自社の強み」を掛け合わせる

ターゲット市場を決めるときに、「市場が大きいから」という理由だけで選ぶのは危険です。

大きな市場には、多くの場合、強い競合も存在します。

そこで考えたいのが、「市場の魅力 × 自社の強み」という視点です。

例えば、市場規模は十分にあるか。今後も成長が期待できるか。

顧客はお金を払ってでも解決したい課題を抱えているか。競合企業はどれくらいいるか。

そして何より、その市場で、自社ならではの価値を提供できるか。

市場だけを見るのではなく、自社との相性まで考えることが重要です。


■小さな会社ほど「絞る」ことで強くなる

経営資源に限りのある中小企業が、大企業と同じようにあらゆる市場を狙うことは現実的ではありません。

だからこそ、戦う場所を絞ります。

例えば広告予算が月30万円あるとします。

これを10種類の顧客層へ3万円ずつ使うよりも、自社が最も得意とする顧客層へ集中させた方が、認知もノウハウも蓄積しやすくなります。

営業も同じです。

特定の業界に集中すれば、「この業界では、こんな悩みが多い。」「このタイミングで、この提案が響く。」という経験が蓄積されます。

その結果、さらに営業力が高まります。

「狭く深く」入り込み、そこで圧倒的に選ばれる存在になる。

中小企業にとって非常に有効な戦い方です。


■ターゲット市場は「利益」でも検証する

売上が大きい市場が、必ずしも良い市場とは限りません。

実際には、

「売上は大きいけれど利益が残らない。」

「手間がかかりすぎて採算が合わない。」

ということもあります。

そこで、自社の顧客を一度分析してみましょう。

例えば、売上高、粗利益率、継続率、紹介率、対応時間、回収状況などを顧客属性ごとに確認します。

すると、

「実はこの業界のお客様は利益率が高い。」

「この規模の会社は継続率が高い。」

「このサービスから紹介が多く発生している。」

といった事実が見えてくることがあります。

ターゲット市場は、経営者の感覚だけではなく、数字からも検証することが大切です。


■ターゲット市場を決めると、経営判断が速くなる

ターゲット市場が明確になると、マーケティングだけでなく経営そのものがシンプルになります。

新しい商品を開発するときも、

「ターゲットのお客様は欲しいだろうか?」

広告を出すときも、

「ターゲットのお客様に届く媒体だろうか?」

採用するときも、

「この市場で価値を提供するために必要な人材は誰だろうか?」

という基準で判断できます。

つまり、ターゲット市場は単なる営業戦略ではありません。

会社全体の意思決定を揃えるための「軸」になるのです。


■一度決めた市場に固執しない

市場は変化します。

人口構成も変わります。

競合も増減します。

技術も進歩します。

お客様のニーズも変わります。

そのため、ターゲット市場は一度決めて終わりではありません。

少なくとも年に一度は、

「この市場は今後も成長するのか?」

「自社の強みはまだ通用しているか?」

「もっと自社が価値を出せる市場はないか?」

と見直してみましょう。

戦う場所を変えることも、立派な経営戦略です。


■チェックポイント

✅ 自社が狙う市場を具体的に説明できるか?

✅ 地域・業種・企業規模・顧客課題などで市場を細分化しているか?

✅ 市場規模や成長性、競合状況を確認しているか?

✅ 自社の強みが活かせる市場を選んでいるか?

✅ 顧客別の売上だけでなく、利益率や継続率も分析しているか?

✅ ターゲット市場を定期的に見直しているか?


■「何を売るか」と同じくらい、「どこで戦うか」が重要

優れた商品。優秀な社員。十分な営業力。

それらを持っていても、戦う市場を間違えれば成果を出すことは難しくなります。

反対に、自社の強みが最大限に活きる市場を選び、そこへ経営資源を集中できれば、中小企業にも大きなチャンスがあります。

大切なのは、「市場があるから売る」のではなく、「自社が勝てる市場を選ぶ」こと。

そして、「この市場、このお客様なら、自分たちが誰よりも力になれる。」そう言える場所を見つけることです。

限られた人、時間、お金をどこへ投入するのか。

ターゲット市場を定義することは、会社の未来に対して「どこで勝負するのか」を決断することなのです。


更なる熱量を。
税理士事務所WATT 代表税理士 井深悠人


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