はじめに
「できるだけ多くのお客様に選んでもらいたい。」経営者であれば、そう考えるのは当然です。
しかし、マーケティングにおいて「誰にでも選ばれたい」という考え方は、時として「誰にも強く響かない」という結果を招きます。
商品やサービスを考えるとき。ホームページを作るとき。広告を出すとき。営業活動をするとき。
まず明確にしたいのが、「自社は、誰を幸せにしたいのか?」という問いです。
その「誰」を具体的に描いたものが、顧客像、いわゆるペルソナです。
■「ターゲット」と「ペルソナ」は少し違う
例えば、自社のお客様を、「岐阜県内の中小企業経営者」と設定したとします。
これはターゲットとしては間違っていません。
しかし、この情報だけで、「どんなサービスを提供すれば喜んでもらえるのか?」「どんな言葉なら振り向いてもらえるのか?」まで考えるのは難しいでしょう。
そこで、もう一段階掘り下げます。
例えば、「岐阜市で従業員15名の製造業を経営する45歳の社長。売上は順調に伸びているが、利益が残らないことに悩んでいる。数字にはあまり強くなく、相談できる相手もいない。今後は社員を増やし、会社をもう一段階成長させたいと思っている。」
ここまで具体的になると、伝えるべきメッセージが見えてきませんか?
これがペルソナを設定する大きな意味です。
■「誰に売るか」で商品そのものが変わる
ペルソナは、広告を考えるためだけのものではありません。
むしろ、商品・サービスそのものを磨くために使うべきものです。
例えば同じ飲食店でも、「小さな子どもを連れた家族」をメイン顧客にするのであれば、キッズメニュー、座敷、ベビーチェア、駐車場などが重要になるでしょう。
一方で、「仕事帰りの30代会社員」を狙うのであれば、
駅からの距離、一人でも入りやすい席、提供スピードなどが重要になるかもしれません。
顧客が変われば、求められる価値も変わります。
だからこそ、「何を売るか」を考える前に、「誰に売るか」を考える。この順番が非常に重要なのです。
■ペルソナは「想像」で作って終わりにしない
ここで注意したいことがあります。
ペルソナを経営者の頭の中だけで作ってしまうことです。
「きっとお客様はこう考えているだろう。」
「このサービスを求めているはずだ。」
これだけでは、単なる思い込みになってしまう可能性があります。
実際のお客様に、
- なぜ自社を選んだのか
- 何に困っていたのか
- 何と比較したのか
- 契約前に不安だったことは何か
- 自社の何を評価しているのか
などを聞いてみましょう。
営業担当者や現場の社員が持っている情報も貴重です。
ペルソナは会議室の中だけで作るものではなく、お客様との対話から作るものなのです。
■「誰にでも売る」をやめると、メッセージが強くなる
例えばホームページに、「お客様に寄り添い、丁寧なサービスを提供します。」と書いてあったとします。
悪い表現ではありません。
しかし、多くの会社が同じことを言っています。
一方、「創業して3年。売上は伸びてきたけれど、手元にお金が残らないと感じている経営者へ。」と書かれていたらどうでしょうか。
該当する経営者は、「これは自分のことだ。」と思うはずです。
マーケティングで重要なのは、たくさんの人に薄く伝えることではありません。
届けたい相手に深く刺さることです。
ペルソナが明確になるほど、広告や営業の言葉は強くなります。
■社内で「顧客像」を共有する
ペルソナは、経営者やマーケティング担当者だけが理解していても十分ではありません。
営業、商品開発、接客、カスタマーサポートなど、お客様に関わる社員全員で共有することが大切です。
「私たちは、誰のために仕事をしているのか。」
この認識が揃えば、商品開発も、営業も、接客も、広告も、同じ方向を向き始めます。
ペルソナは、マーケティング施策であると同時に、会社全体の判断基準にもなるのです。
■ペルソナは定期的に更新する
一度作ったペルソナを、何年もそのまま使ってはいけません。
市場は変わります。お客様の価値観も変わります。
そして、自社の商品や強みも変化していきます。
年に一度でも構いません。
「今、本当にこの人がお客様なのか?」
「最近増えているお客様に共通点はないか?」
「利益率や継続率が高いお客様はどんな人か?」
と振り返ってみましょう。
理想の顧客像は、事業の成長とともに磨き続けるものです。
■チェックポイント
✅ 自社の「理想のお客様」を具体的に説明できるか?
✅ 年齢・地域・業種だけでなく、悩みや価値観まで考えているか?
✅ 実際のお客様の声をもとにペルソナを設定しているか?
✅ ホームページや広告のメッセージがペルソナに向けた内容になっているか?
✅ 社員全員が「誰のために仕事をしているのか」を理解しているか?
■「誰に届けたいか」を決めることからマーケティングは始まる
良い商品を作れば売れる。
良いサービスを提供すれば選ばれる。
残念ながら、それだけでは十分ではありません。
どれだけ素晴らしい価値を持っていても、その価値を必要としている人に、その人に響く言葉で伝えなければ、選んでもらうことはできません。
だからこそ、まず考えてみてください。
「私たちは、誰を一番幸せにしたいのか?」
その答えが明確になれば、会社のマーケティング全体が一本の線でつながっていきます。
「みんなのお客様」ではなく、「この人のための会社」と言えるほど顧客を理解する。
そこから、選ばれる会社づくりが始まるのです。
更なる熱量を。
税理士事務所WATT 代表税理士 井深悠人
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