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2026.08.12

【第63回】顧客像(ペルソナ)は明確か?

はじめに

「できるだけ多くのお客様に選んでもらいたい。」経営者であれば、そう考えるのは当然です。

しかし、マーケティングにおいて「誰にでも選ばれたい」という考え方は、時として「誰にも強く響かない」という結果を招きます。

商品やサービスを考えるとき。ホームページを作るとき。広告を出すとき。営業活動をするとき。

まず明確にしたいのが、「自社は、誰を幸せにしたいのか?」という問いです。

その「誰」を具体的に描いたものが、顧客像、いわゆるペルソナです。


■「ターゲット」と「ペルソナ」は少し違う

例えば、自社のお客様を、「岐阜県内の中小企業経営者」と設定したとします。

これはターゲットとしては間違っていません。

しかし、この情報だけで、「どんなサービスを提供すれば喜んでもらえるのか?」「どんな言葉なら振り向いてもらえるのか?」まで考えるのは難しいでしょう。

そこで、もう一段階掘り下げます。

例えば、「岐阜市で従業員15名の製造業を経営する45歳の社長。売上は順調に伸びているが、利益が残らないことに悩んでいる。数字にはあまり強くなく、相談できる相手もいない。今後は社員を増やし、会社をもう一段階成長させたいと思っている。」

ここまで具体的になると、伝えるべきメッセージが見えてきませんか?

これがペルソナを設定する大きな意味です。


■「誰に売るか」で商品そのものが変わる

ペルソナは、広告を考えるためだけのものではありません。
むしろ、商品・サービスそのものを磨くために使うべきものです。

例えば同じ飲食店でも、「小さな子どもを連れた家族」をメイン顧客にするのであれば、キッズメニュー、座敷、ベビーチェア、駐車場などが重要になるでしょう。

一方で、「仕事帰りの30代会社員」を狙うのであれば、
駅からの距離、一人でも入りやすい席、提供スピードなどが重要になるかもしれません。

顧客が変われば、求められる価値も変わります。

だからこそ、「何を売るか」を考える前に、「誰に売るか」を考える。この順番が非常に重要なのです。


■ペルソナは「想像」で作って終わりにしない

ここで注意したいことがあります。
ペルソナを経営者の頭の中だけで作ってしまうことです。

「きっとお客様はこう考えているだろう。」
「このサービスを求めているはずだ。」

これだけでは、単なる思い込みになってしまう可能性があります。

実際のお客様に、

  • なぜ自社を選んだのか
  • 何に困っていたのか
  • 何と比較したのか
  • 契約前に不安だったことは何か
  • 自社の何を評価しているのか

などを聞いてみましょう。

営業担当者や現場の社員が持っている情報も貴重です。

ペルソナは会議室の中だけで作るものではなく、お客様との対話から作るものなのです。


■「誰にでも売る」をやめると、メッセージが強くなる

例えばホームページに、「お客様に寄り添い、丁寧なサービスを提供します。」と書いてあったとします。

悪い表現ではありません。

しかし、多くの会社が同じことを言っています。

一方、「創業して3年。売上は伸びてきたけれど、手元にお金が残らないと感じている経営者へ。」と書かれていたらどうでしょうか。

該当する経営者は、「これは自分のことだ。」と思うはずです。

マーケティングで重要なのは、たくさんの人に薄く伝えることではありません。

届けたい相手に深く刺さることです。

ペルソナが明確になるほど、広告や営業の言葉は強くなります。


■社内で「顧客像」を共有する

ペルソナは、経営者やマーケティング担当者だけが理解していても十分ではありません。

営業、商品開発、接客、カスタマーサポートなど、お客様に関わる社員全員で共有することが大切です。

「私たちは、誰のために仕事をしているのか。」

この認識が揃えば、商品開発も、営業も、接客も、広告も、同じ方向を向き始めます。

ペルソナは、マーケティング施策であると同時に、会社全体の判断基準にもなるのです。


■ペルソナは定期的に更新する

一度作ったペルソナを、何年もそのまま使ってはいけません。

市場は変わります。お客様の価値観も変わります。

そして、自社の商品や強みも変化していきます。

年に一度でも構いません。

「今、本当にこの人がお客様なのか?」

「最近増えているお客様に共通点はないか?」

「利益率や継続率が高いお客様はどんな人か?」

と振り返ってみましょう。

理想の顧客像は、事業の成長とともに磨き続けるものです。


■チェックポイント

✅ 自社の「理想のお客様」を具体的に説明できるか?

✅ 年齢・地域・業種だけでなく、悩みや価値観まで考えているか?

✅ 実際のお客様の声をもとにペルソナを設定しているか?

✅ ホームページや広告のメッセージがペルソナに向けた内容になっているか?

✅ 社員全員が「誰のために仕事をしているのか」を理解しているか?


■「誰に届けたいか」を決めることからマーケティングは始まる

良い商品を作れば売れる。

良いサービスを提供すれば選ばれる。

残念ながら、それだけでは十分ではありません。

どれだけ素晴らしい価値を持っていても、その価値を必要としている人に、その人に響く言葉で伝えなければ、選んでもらうことはできません。

だからこそ、まず考えてみてください。

「私たちは、誰を一番幸せにしたいのか?」

その答えが明確になれば、会社のマーケティング全体が一本の線でつながっていきます。

「みんなのお客様」ではなく、「この人のための会社」と言えるほど顧客を理解する。

そこから、選ばれる会社づくりが始まるのです。


更なる熱量を。
税理士事務所WATT 代表税理士 井深悠人


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